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ラーメン談義

文化の違い

 今年の春、二週間ほどイギリスに滞在した。かつてはわたしもそこで1年半留学生活を送っていた街。そこで博士課程に進んだ元同級生と会って、せっかくだから日本料理を食べようということになり、近くのお店に入った。久々に英語でのおしゃべり。一度離れてしまうと、どうしても緊張はするけれど、それよりも近況報告の方が楽しくて、英語がどうのこうのという心配はすぐに霧消した。お店はといえば、価格は安いわけではないけれどかなり人気のようで、お客さんがたくさん入っていた。店員さんは日本人だけど、客はわたし以外全員外国人。カレーライスを食べたり、お寿司を食べたり、枝豆をつまんだりと、思い思いの食事を楽しんでいる。

 友人が、「ここのラーメンが美味しいんだよ」と勧めてくれたので、友人と二人で醤油ラーメンを注文。スープを一口。うん、少し味は濃いけれど、たしかにイギリスで食べたラーメンの中では、美味しい!

 ここで、わたしの中で問題発生。友人は、麺をすすっていない!麺をすするのはご法度か。

 「食べ方」というものは、文化によってさまざまな作法がある。「外国に行ったら、すすって食べちゃだめだよ!」というのは、海外旅行者がよく注意されるマナーの一つだろう。ナイフとフォークは外側から、とか、食器を手に持って良いとか悪いとか、行き先によって、心に留めておくべきとされる作法はたくさんある。マナーはその人個人にとっての「食べやすさ」以上に、周りを見ながらという側面が強くなる。わたしは固まった。わたしにとってラーメンはすすって良いもの。ましてや、日本料理屋に来ていて、店員さんも日本人。理解はあるだろう。でも、ここはイギリスであって、周りにいるのはイギリス人をはじめとする、「外国人」(ほんとうなら、日本人であるわたしが「外国人」なのだけれど、とりあえず日本人じゃない人、ということ)ばかり。

 結局わたしは、気をつけてすすらないように食べた。少しでも油断すると、いつもの癖ですすってしまいそうになるので、妙な集中力を要した。

 さあ、スープは少し味が濃かったけれど、美味しかった。どのみち日本でラーメン食べるときだって、塩分も脂分も過剰摂取になってしまいそうだし、スープを全部飲むわけではない。麺や上に乗っている具を完食し、満足すると、正面に座る友人が「あれ、スープ残すの?」

 友人の器を見ると、スープも含めて完食。あっぱれ。うーん、たしかに、洋食でスープでてきたら、全部飲むものね。ミネストローネ出てきて具だけ食べる人、見たことないもの。こんなところにも、食の文化の差が。

 文化の違いをいろいろ実感しつつ、久々に会った友人とおしゃべりしながらの食事はやっぱり充実感がある。多少のマナーの違いはあれど、「おいしいね」と言いながら同じものを食べる。結局のところ、それで良いじゃないか。