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飛行機の思い出

 先日までは北陸に行っていたが、明日からは北海道だ。北海道へは、飛行機でいく。小さい頃から親が海外で仕事をする機会があって、それについていかせてもらったことがあったこと、それに比べて飛行機を使った国内旅行が少なかったことから、国内線の飛行機に乗るというのは、なんとも不慣れで、ちょっとドキドキしてしまう。搭乗の2時間前に空港でチェックインしていなくても良いなんて!12時間のフライトならともかく、2時間のフライトは適度な短さで、楽しい。離着陸のドキドキ感、窓の景色の変化は飛行機ならではの経験だ。

 あれは中学3年生くらいの頃だったか。その頃には、アメリカに、家族ぐるみの付き合いのある友達の家があった。というよりは、親同士がもともと友達で、子供同士も仲良しになったという感じだ。私たちが大きくなると、何年かおきに、夏休みになるとお互いの家にホームステイさせてもらったりしていた。中学3年にして、わたしは生まれて初めて、一人でアメリカに行き、ホームステイさせてもらうことになっていた。それまでの渡米は、すべて英語をしゃべれる親が一緒だった。でも、今回は、わたし一人。空港の手続きもすべて、自分で立ち向かわなければならない。

 この初めての冒険に、わたしのテンションは成田空港に着く頃からマックスになっていた。空港まで送ってくれた親に手を振って別れ、ウキウキで搭乗の手続きを進めていく。スーツケースはちゃんと預けたし、リュックサックには、パスポートと搭乗券、お財布や携帯電話、ちょっとしたおやつ、そしてゲームボーイアドバンスが入っていた。飛行機の中で、ポケモンで好きなだけ遊ぶつもりだった。

 飛行機は順調に離陸、わたしも順調に美味しくない機内食を食べ、ポケモンで遊び、そしていつのまにか寝てしまっていた。アメリカに着くまで、あと9時間ーーー

 

ーーードスン。目が覚めたら、着陸していた。そんなに長時間寝たのか、と驚いた。周りはざわついている。窓の外は、わたしが来たことのある空港の景色とは違う。機内の映像で映されている、飛行機の現在地を示す地図は、アラスカを示していた。

 乗る飛行機を間違えた!

わたしが目指していたのは、シカゴだ。こんなところで降ろされたらどうしよう!寝起きにこんな衝撃的なことに気づき、ショックを受けていた。運良く、隣の席は日本人の夫婦だったので、「なにがあったんですか?」と聞いてみた。もしほんとうに「もう目的地に着いたのよ」と、この優しそうな奥さんが言ったら、わたしはどうしよう・・・。

 奥さんは言った。「急病人が出て、緊急着陸することになったんですって」。

 あ、知ってる。テレビで観たことある「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」って聞いてまわるやつだ!きっと、お医者さんが見つからなくて、着陸することになったんだ。「お医者様はいらっしゃいませんか?」と聞いて回るところを寝ていて見逃したのは惜しかったけれど(ほんとうに聞いて回ったかはわからない)、とにかくここは途中で寄っただけの場所で、このあとちゃんとシカゴに向かうということがわかり、安心した。それで、ポケモンをまた始めたけれど、また機内放送が聞こえた。「これから給油をするので、さらに出発に時間がかかります」。

 この間、成田にも、行き先のシカゴの空港にも、飛行機の所在が連絡されていなかっったのだそう。そして、寄り道をしたうえに給油でさらに時間がかかり、合計で何時間も飛行機は遅れていた。日本でわたしを見送った母も、アメリカでわたしと合流する予定だったアメリカのお母さんも、「飛行機が行方不明」ということになっていて真っ青になっていたそう。そんなことは知りもせず、わたしはのんきにポケモンをしていたのだけれど。

 

 あの旅が、ほんとうに飛行機を間違えて乗っていたという真相だったら、あのあとどうなっていただろう。一人で、シカゴまでたどり着けただろうか。当時のわたしにどの程度の知恵があったのか・・・今となってはわからない。