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クィディッチ部

 わたしは日本の大学を卒業したその年の秋から、オックスフォード大学の大学院に進学した。入学して最初の一週間くらいは、オリエンテーションやガイダンスの期間で、大学にある部活の紹介などもあった。一つの大きな建物に、いろいろな部活が集まって、新入生の勧誘をする。面白いのは、そこには企業も入っていて、リクルーティングや宣伝もしていたということ。例えば、ドミノピザは、携帯電話の番号の登録でピザ一切れ試食というキャンペーンもやっていた。番号を登録した学生の中から抽選でiPad2が当たるという特典付き。

 いろいろな勧誘の中を巡って、一番印象に残ったのは、「クィディッチ部」だ。クィディッチとは、『ハリーポッター』シリーズに出てくる、箒に乗る球技のゲーム。さすがにオックスフォードに集まる者たちは「マグル」なので、箒で飛んでプレーできるわけではない。仮に魔法使いがいても、バレてはまずいので、やっぱり「マグル」たちの前では飛べないだろう。そういうわけで、マグルの世界のクィディッチ部では、箒くらいの長さの棒にまたがり、その棒を掴みながら走ってプレーするのだそうだ。

 勉強についていくのが精いっぱいになるだろうと判断し(実際そうだった)、結局入らなかったけれど、こういう遊び心は、とても面白かった。もっとまじめな部活やサークルがある中で、クィディッチ部。入ってみたかったかもなあ。オックスフォードvsケンブリッジで試合したりもするらしい。イギリスには各地にクィディッチチームがあって、全英クィディッチカップが毎年開催されているらしい。

 オックスフォードは、ハリーポッター映画の撮影ロケ地の一つでもある。そんな大学で、クィディッチ部に入っていました、なんて言ってみたかった。

 そうそう、部活紹介を一通り巡り終わって、自分の寮に帰ったころ、知らない電話番号から電話がかかってきた。おどおどしつつも出てみると、「ドミノピザだけど、iPad当たったから取りに来て!」とのこと。片道20分はゆうにかかったが、iPad当選。詐欺かなあとも思いつつ、引き返してドミノピザのキャンペーンのブースまで戻ったら、ドミノピザのスタッフから拍手喝采、ハイタッチの嵐。本当にiPadはもらえた。じつはほかの人が当選していたのだけれど、誰に電話をかけても電話に出てもらえず、やっと電話に出たのがわたしだったのだそう。たまには、怖いもの知らずが良い方に作用するのだ。