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ミミが美味しい

 小さい頃、近所の友達とスイミングスクールに通っていた。たいてい一緒に通う友達のママが車で送ってくれていて、帰りには時々、近くのパン屋さんに寄って、翌日の朝ごはん用のパンを買って帰ったものだった。

 あんぱんとか、メロンパンとか、クリームパンとか、子供が好きなパンはたくさんあるけれど、わたしがかなり好きだったパンは、パンの耳だった。パンを買うとき、「パンの耳ください」というと、ビニール袋に数枚分の耳のパンを入れて、無料でくれたのだ。無料でもらえるというのも嬉しかったし、何より、パンとして、美味しくて好きだった。

 友達には、パンを食べるときは内側の白いところの方が好きだからできればパンの耳は残したいという人もいる。フランスパンなどは、できれば真ん中だけくりぬいて食べたいという人も。一方で、わたしはできることならフランスパンは周りばかり食べたい派。気心知れた仲同士なら、需要と供給が一致する。

 ピザも、周りの耳のところが大好きだ。だから、ピザを食べるとき、上に乗っている具は何でも良いけれど、耳までチーズが乗ってるとか、耳にソーセージが埋め込まれているなんていうと、「余計なことしないでよ!」と思ってしまう。それと、薄いピザが四角く切られていて、取る箇所によっては耳の部分が無いというようなものもある。そういうとき、具がたくさん載っている真ん中のあたりばかり食べる人が一緒なら良いが、案外、周りを食べたい人が多いということもある。けっこうみんな、「耳」を狙っているのだ。

 それならば、ピザ全体から具をうんと減らした、「ほとんど耳ピザ」を出して欲しいとすら思ってしまうけれども・・・それはそれでわびしい感じがするのであまり人には言えない。

 そういえば、薄いピザの周りを狙う人は、ファストフード店でフライドポテトを頼むと、綺麗な四角柱の形したポテトよりも、端っこの、カリッとした薄いところを狙う。ほくほく感よりは、カリッと感の方が良い。そういう仲間同士で集まってポテトを食べるときなんて、薄くて小さいかけらのようなところから無くなっていくから面白い。普通の「きれいな形の」ポテトばかり残るのだ。こちらも、「カリッとポテト」といったネーミングの感じで、端っこばかり集めたフライドポテトを出して欲しいと思ってしまう。できればパンの耳のように、値段も安くして欲しい・・・。こういう場合、形は不揃いで良いのだから。

 

 かりかりしたところや、ぺりぺりしたところ、大好き。そういう派閥の人、きっとほんとはもっといると思う。みんな、ちょっと恥ずかしくて言えないだけで。そんなことを、魚の干物の、骨にくっついてペリペリした身の部分をこそぎ落として食べながら、考えた。