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フロアーの数え方

 ビルの高さは、外からみたときに目で見ることができるけれど、地下の深さというのは目視ではなかなかわからない。わたしが時々使う地下鉄のひとつがつくばエクスプレスなのだけれど、あれはかなり深い。秋葉原駅だと、階段にして200段くらいあるようだ。(途中でわからなくなってしまったので、かなりの概算だけど)ビルで言えば、たぶん7階くらいの階段分はあるだろうか。

 自宅のアパートでは3階に住んでいて、エレベーターが無いから、いつも3階分の階段は一息に駆け登れてしまうが、200段、7階分となると、さすがにきつい。今日のような寒い日も、体がちょっと温まるくらいだ。

 

 そういえば、建物の階数をいうとき、イギリスでは数え方が日本と違う。日本は地面の高さのフロアーが1階、そこからひとつ登ると2階だけれど、イギリスは地面の高さが「グラウンドフロアー(ground floor)」、ひとつ登ると「1階(first floor)」で、ひとつズレている。日本での数え方が「常識」と思ってしまうから、イギリスの数え方は、最初は「えっ」という感じがした。

 でも、「最初にゼロを置くかどうか」という観点で見てみれば、日本とイギリスの違いが、別のものの数え方に重なる。そう、年齢だ。いまでは大抵は満年齢だけれど、日本には年齢を「数え」でカウントする方式がある。方式がある、というより、昭和の途中でやっと日本でも満年齢を取り入れたようだから、長いこと「数え」だった。生まれたらまず「1歳」。次にお正月が来て「2歳」というカウントだ。だから、年末に生まれれば、生まれて数日で、数えでは2歳となる計算。

 一方で、イギリスだけじゃないけれど、満年齢は、生まれたらまずはゼロ歳で、次の誕生日にやっと1歳だ。先述の、年末に生まれた子で例えるなら、数えではお正月になれば2歳になっちゃう子も、満年齢では次の年末までゼロ歳のまま、というわけ。

 

 まず生まれた時点の年齢を「1歳」として、年が明けるごとに2歳、3歳と増えていく数えの歳は、地面の高さを「1階」として、階段を登るごとに2階、3階と増えていくフロアーの数え方に重なる。

 生まれた時点の年齢は「ゼロ歳」で、誕生日ごとに2歳、3歳と増えていく満年齢のカウントは、地面の高さを「グラウンドフロアー(ゼロ階)」として、階段を登るとやっと1階、さらに2階、3階と増えていく、イギリス式のフロアーの数え方に重なるのではないか。

 

 じゃあ昔から満年齢で数えていた国全部が、イギリスと同じフロアーの数え方をしているかというと、そうでもないのが不思議だ。どうやら、ヨーロッパや、元イギリス植民地は、イギリスと同じ方式の国があるようだけれども。アメリカなんかは、日本と同じだった気がする。

 ものの数え方、ゼロから始めるのか、イチから始めるのかの基準などは、文化によっても様々だけれども、同じ文化の中でも、年齢の場合と階数の場合など、場合によっては変わることもあるらしい。「数字」「かぞえかた」という、曖昧さが生まれにくい観点こそ、文化ごとの微妙な違いが垣間見えて、おもしろい。