誰の咳

 スポーツジムで好きなだけ運動したあと帰り道をのんびり歩いていたら、小学生男子四人組が、楽しそうにおしゃべりしながら歩いてきて、近くにとめていた自転車にそれぞれ乗ろうとしてた。

 自転車のスタンドを足で蹴り上げ、サドルに跨ろうとした瞬間、一人が盛大な咳を。

「ゴホッゴホッ!」

「お前、それ、おっさんの咳じゃん!」

「うるせー!」

 声変わりもしていない、いかにも少年らしい声が、鋭いツッコミを入れる。

 字面で見ると咳におっさんも少年も関係ないような気もするが、いやいや、「おっさんらしい」咳ってある。少年の咳は、細身の体には似合わないようなおっさんっぽい「重量感」があった。きっと将来立派なおっさんになるだろう。

 そのあと、少年たちはみんな立ち漕ぎで、いかにも元気に自転車を漕いで行った。