ヒガシのヨッパライ

 金曜日の夜。おっさんたちは、酔っ払う。この季節だから少ないとはいえ、道や駅のベンチに座り込み、周りの人に絡んだり、寝ちゃったり、散らかしたり。今日の帰り道も、そんな感じだった。

 あまりジロジロみるのは良くないと思うからあまり凝視はしないけれど、耳は情報を拾う。よーく聞いていると、ひとつ、多くの人がいうことばが。

 「バカヤロウ」

 目の前を通った人にも言うし、声をかけてきた駅員さんや、お巡りさんにも。

 「バカヤロウ」

 「バカヤロウ」

 

 「バカヤロウ」

 

 あの人も、この人も、そうなのだ。若い酔っ払いの人はそうでもない気がするけれど、一定の年齢以上の人は、酔っぱらって座り込むと、やたらと呂律の回らない「バカヤロウ」を連発する。酒の作用でうまく働かない思考が、周りの状況を理解できずに、とにかくバカヤロウ、ということなのだろうか。酔ってゴキゲンな感じの人も、怒ったりどなったりしている人も、調子は違っても「バカヤロウ」なのだ。

 でも、この傾向は、関東の、あるいは東京のものなんじゃないかという気もする。日本では千葉と東京にしか住んだことのないわたしには、テレビといったメディアくらいしか情報源がないけれど、例えば関西系のお笑い芸人やタレントが「バカヤロウ」と言うのはほとんど聞かない。「バカヤロウ」といえば、やっぱり、ビートたけしとか、そういう、関東、東京圏の人なイメージだ。

 じゃあ、他の地域のヨッパライは、何をいうのだろう。関西と関東、という二分法だけじゃなくて、きっと、東北とか、九州とか、日本の地域によって、ヨッパライたちがいう「バカヤロウ」の代わりの言葉があるんじゃないか。それは「アホ」とかそういう言葉かもしれないし、「バカ」とか「アホ」とは違う意味合いのものかもしれない。でも、わたしにはわからない。