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誰が子供を叱るか

エッセイ

 日用品を買おうと出かけたら、店頭で展示されているソファで、小学校低学年くらいの子供たちがわざわざ靴を脱いでキャッキャと遊び始めた。そのソファの前には、展示物なので休憩したり遊んだりしないように、という注意書きがある。あ、これは親がきて「こらっ!やめなさい!」と叱れられる場面だ。そう直感した。

 でも、現れたのは、店員のお姉さん。子供たちの方に向くわけでもなく、近くまで行って、ひたすら「いらっしゃいませ〜」「いらっしゃいませ〜」と言い続ける。そのお姉さんに気づいた一人のパパが、男の子一人に「やめなさい」と言いながら、ソファから下ろそうとしたけど、他の子達とは関係ないのか、他の子供には注意しない。お姉さんは、困ったように「いらっしゃいませ」を続ける。「この子たちの保護者の人、どうか気づいて!」という心の声が聞こえるようだった。

 何か言えば、トラブルになるかもしれない。そういうリスクが頭の中に出てきてしまって、なかなか他人は口を出せない。一方の店員さんが子供に注意をできなかったのは、そういうマニュアルだからだろうか。

 結局わたしが見ている間に、パパにソファから降ろされた男の子以外の子達の保護者は現れなかった。店員さんは「いらっしゃいませ」だけだった。そりゃあ、「いらっしゃいませ」だけ言っていたって、「ここで遊ばないでね」という言外の意味を伝えるのは難しいだろう。それをいけないことと思ってなければ、店員さんがせっせと呼び込みをしているだけにしか見えないのだから。わたしを含め、周りの大人たちは、心配なような、困ったような、でも見えないふりという感じだった。子供は相変わらず、夢中で、楽しそうだった。

 つかつか、と歩み寄って、何か気の利いた言葉でも言えれば、格好良かったんだろうけれど、それにはまだ経験値が足りなかった。