歯医者にて

 およそ7ヶ月ぶりに、歯医者へ行った。虫歯の治療ではないけれど、歯石の除去とか、まだ残っている乳歯を守るためのメンテナンスとか、そういうことのために。痛い治療はないし、終わると口内がツルツルになって気持ち良いから、昔ほど歯医者へ行くのは嫌じゃない。昔は、それはそれは憂鬱だったけれど。

 そこの歯医者は、トレードマークがフクロウ印。以前、雑談の中で、実家にフクロウがいるということを話したら興味を持ってくれて、行く度に、フクロウちゃん、元気にしてます? と聞いてくれる。歯科衛生士さんだけじゃなくて、ドクターもフクロウに興味があるようで、今日は左右からフクロウのことを聞かれまくった。フクロウのことにあれこれ興味を持って、聞いてもらえるのは嬉しいし、ある程度応えられるから楽しい。つい、色々と話してしまった。

 話している途中で、「じゃあ、また椅子倒しますね、口を開けてください」と言われ、椅子に身を任せ口を開ける。自然と、会話は途切れる。と思いきや、向こうは引き続き色々聞きたいようだ。歯石を削り取りながら、色々なことを聞かれる。食べ物はどうするのか、フクロウを飼ってると旅行なんかは行けないのか、などなど。こちらは口の中にあれこれ入れられているし、精々「はい」とか「ううん」とかくらいしか言えないのに、イエス/ノーでは答えられないようなことも聞かれ、戸惑う。歯医者の人は、どんな風に会話が進むことを想定しているのだろう? よく考えたら、他の人がどうしているか、観察なんてしたことがなかったし、「正しい」やり方を知らないことに気づいた。

 実は、全国共通のボディランゲージでもあるのだろうか。手話のような? 「痛いときは左手を上げる」というルール以外にも、わたしの知らないところで、コミュニケーションの方法があるのだろうか。大きな口を無防備に開けて口内を治療されている姿ってあまり人に見られたくないものだし、覗いたことはない。でも、みんなはどうしているんだろう。ちょっと、いろんな人に聞いてみたくなった。