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桃太郎のおとも

 いよいよ新作のゼルダを買った。早速プレイして、まだ序盤だけれど、大いに楽しんでいる。オープンワールド系のゲームって苦手な気がしていたけれど(ゼノブレイドクロスFFXV)、随所に感じられる「ゼルダっぽさ」がそれを払拭してくれる。

 ネタバレを書く気は無いけれど、主人公リンクは、新たに村を訪れるたび、人に出会うたび、腰につけているとあるアイテムに気づかれ、「もしや、その腰にあるものは・・・」という感じで、自分が勇者であることを認知される。それであれこれとイベントが進んでいくようなのだが、腰につけたものがきっかけに物語が進んでいく、という大枠を見たときに、思い出さざるを得ないものがある。小さい頃、絵本で、あるいは寝物語として知った、ご存知『桃太郎』だ。「もしや、その腰にあるものは・・・」というようなセリフが、どうしても、桃太郎の歌の、「お腰につけた きびだんご ひとつ わたしに くださいな」に脳内変換される。小さい頃からの刷り込みの強力さに驚いている。

 桃太郎といえば、おともに犬と猿と雉を連れていて、「日本一」と書かれた旗を背負っている姿が連想されるだろう。犬は昔から人間の身近な存在、相棒という立ち位置にいたからわかるし、猿も、動物の中では頭が良さそうだし、おともにしたいのもわかる。それに、さるかに合戦などのお話にも出てくるし、野山に野生で住んでいるのを知っていたから、人間にとって、犬ほどじゃないとしても、身近な存在なんだろう。でも、なぜ雉? と思っていた。ニワトリにハト、カラス、スズメなど、鳥類はいくらでもいる。鷹でもフクロウでも良い。そうじゃなくて、雉。そのことに、あまり納得できないまま、気づけば大人になっていた。

 今日、その認識が、少し変わった。実家は千葉県の幕張の方なのだけれど、実家に仕事で行ったついでにまた母と摘み草をしていたとき、茂みから一羽の、大ぶりな鳥が歩いて出てきたのが視界の端に入った。あまり危機感もなくのそのそと歩く姿に目が行きよく見てみると、野生の雉だったのだ! 雉のオスは美しい羽をもっていて、結構派手だ。他の鳥と間違いようがない。驚きすぎて、一周まわって冷静になってしまったのか、案外冷めた声で母に「あ、雉だ」と言った。母は冗談だと思ったらしいが、振り向いた母は「ほんとだ!」と驚きの声。二人でそおっと後をついて行ったら、雉は枯れ草の茂みに入ってしまい、結局それきり見えなかった。でも、二人とも、両の目でしかと見た。あれは、雉だ。幕張なんて、千葉じゃ都会の方だと思っていたけれど、少し中心から離れるだけで、野生の雉が歩いている。21世紀の世の中じゃ珍しくなっているのかもしれないけれど、雉だって、人間の身近な存在だったのかな、と初めて思った。だって、何事もないように、歩いていたんだ。

 長いこと、川が氾濫しやすくて田んぼくらいにしか使えなかった土地が、護岸工事によって宅地に開発され、わたしが子供だった頃に泥まみれになって遊んだ場所も、今はもう人が住んでいる。そうやって街は変わっていくけれど、まだまだ、雉が歩く場所だってあるんだと気づかされた。意外と幕張も田舎です。