キジの導き

 お彼岸も最後の日の今日、イギリスへ単身赴任中の父も日本に帰ってきているということもあり、祖父のお墓参りをして、その足で地元へ。せっかくの春の陽気、母とわたしは勇んで散歩へ。春にしかできない遊びは、春のうちに遊びつくす。そういう心づもりだ。それで、先日書いた、キジを見たところへ、再度行ってみることに。ただキジがいるかも、というだけでなく、近くにセリやつくしが生えそうな場所があったので、あわよくば今日も春の味覚を採集しようと思ったのだ。

 「この間は、あそこの駐車場でキジを見たんだよねえ」なんてしゃべっていると。なんと、また、いるではないか! 一羽のオスのキジが!!

 草はらを挟んだ向こう側の駐車場に止まっている車の、すぐ近く。白い車を背景に、見事な色のキジの羽。母とわたしとで、びっくりして、草はらを回り込んで、駐車場へ向かった。

 回り込むまでの少しの間、枯れ草の叢でキジの姿が見えなくなる。まだ、そこにいてくれ・・・! そう願いながら、回り込み、砂利が敷き詰められた駐車場まで入って、そろりそろりと奥へ。一番奥の車の近くに、キジがいたはず。

 

 さっきまでいた、車の後ろには、いない。でも、視線を少し移すと、なんと、白い車のボンネットの上に!

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 もう少し近づこうとしたら、車の向こう側に降りてしまった。さらに近づくと、そこから10メートル弱ほど飛んで、いよいよ見えない茂みに入ってしまった。それきりだった。

 ふと、足元を見てみると、つくしがツンツン生えていた。「目の慣れ」というのはすごいもので、最初は「あれ、何本か生えているかな?」くらいにしか思わないのに、目が慣れると、幾つも、幾つも見つかる。結局、そこはかなりたくさん生えている場所で、小さすぎるのや細すぎるのを避けて採っても十分食べられるくらいには採れた。

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 キジに寄せられて、これまで知らなかったつくしのスポットを新たに知った。幕張という微妙に田舎、微妙に都会という場所で、なかなか面白い体験だった。もちろん、つくしは卵とじになった。ハカマを取るのは多少面倒だし、爪はアクで黒っぽくなるけれど、それでも春らしさを感じられる味覚、楽しいひと時だった。

 そういえば、キジが乗っていた白い車、つくしを満足するまで採ってふと良く見たら、BMWだった。ボンネットにキジの爪の跡がついていないと良いけれど。ついていたとして、車の主は、それがキジの爪だと思うだろうか? 母とわたしとキジだけが知っている、秘密になった。