記憶とは

 「記憶力がある」という時、英単語とか、歴史の年表とか、あるいは人名・人の顔などを指すことが多いと思う。わたしは、そういう記憶力はけっこう弱い。受験勉強でも、そういう勉強の仕方はからきしダメ。一方で、音の記憶力はかなりある方で、英単語や熟語も、参考書に付属するCDをひたすらに聴いて覚えた。ありがたいことに、フォニックスの基礎は身につけていたので、単語の発音を正しく覚えていれば、大抵は正しいスペリングがわかる。だから、とにかく耳で覚えることに集中した。

 人の声も覚えられる方だったから、アタマの中で、誰かが喋る様子を音声として再生できた。音程や強弱、リズムなどがいっぺんに覚えられるので、それを再現できれば、それなりのモノマネができた。ただし、ひとたびモノマネを披露してしまうと、声の記憶が、「自分がモノマネした声」に上書きされてしまう。そうすると、そこからはモノマネのクオリティが劣化していく。だから、一発目で上手いのができたからといって、もう一度やっても全然ウケないのがいつものパターンだ。

 

 昨日、NHKスペシャル「人体」で、脳の仕組みを解説し、記憶がどのように作られていくかということが紹介されていた。脳内の情報のやり取りが電気信号なのだということはなんとなく知っていたけれども、記憶の一つ一つは、脳内のある場所の、電気信号の回路のバリエーションなのだということは初めて知った。回路を作る細胞は、人間は90歳くらいになっても新しいものがどんどん作られるらしい。そして、新しい細胞ができていくと、それが新しい記憶の回路となって、記憶を次々に蓄積していけるそうだ。だから、記憶力を伸ばすためには、その新しい細胞ができていくような生活習慣が必要だと言う。

 歴史の年号や、人の名前といった記憶に弱いと自覚するわたしは、食い入るようにテレビを観た。どうすれば、記憶の回路の細胞が増えるの!

 そこで出てきたのは、何かを食べた時に膵臓が出す「インスリン」と、筋肉が出す、何だったか忘れちゃったけれど、何かの物質が、記憶の回路の細胞を作るために必要とのこと。

 ナレーターが言う。記憶を伸ばすには、正しい食事の習慣と、適度な運動が必要です。

 ーーーそんなこと、小学生の頃から言われている。そして、それがなかなか保てないのが、現代社会というものだ。わたしは、がっかりした。

 とはいえ、小学校で、理由はよくわからないけれども「よく食べ、よく運動しましょう」と言われるよりは、ああやって「脳の仕組み」と絡めて言われてしまうと、納得してしまう気持ちにもなる。そうだな、よく食べ、よく運動をしよう。

 番組内では、脳内の電気信号などを、最新の技術で撮影していた。あんな風に技術が発展すると、自分の脳のどこが活発になっているか、リアルタイムで自分で見られるようになるのだろうか。それは、とっても面白そうだ。

 

 視覚的な情報の記憶は弱くて、耳で聞く、聴覚的な情報の記憶は強い。その違いも、いつか解明されるだろうか。科学の進歩は、やっぱりワクワクする。