怪しげなアドバイスと人質

 さて、このブログを開くのも、随分久々になってしまった。離れている間に、私は妊娠して、息子を出産した。来週で、息子は生まれて3ヶ月になる。お食い初めも、もう近い。以前のように、毎日ブログを書くというのは、赤ちゃんとの生活の中ではなかなか難しいところではあるけれども、また再開させてみようと思う。今日は、その第一歩だ。

 

 科学というのは進歩していて、日々、あらゆる現象が科学的に解明されているというのに、妊娠出産や子育てについては、まだまだ神秘に包まれているところが多いようだ。それは同時に、様々な俗説や昔からの知恵を生き残らせる結果にもなっているらしい。子育てに困った時の対処法を調べてみると様々なアドバイスが出てくるし、保健師さんや助産師さんといったプロに聞いても、人によって答えは違う。中にはおまじないのようなものもあれば、理屈が通っているように感じられるものもあって、とにかく、自分なりに情報を取捨選択しないと、やっていけないのが、イマドキの育児のようだ。

 例えばーーいよいよ臨月になった時、初産ということもあって、息子は予定日を過ぎても生まれなかった。そんな時、「早くお産が始まるように」と、いろんな人から、いろんなアドバイスをもらった。

・スクワットをすると良い
・よく歩くと良い
・階段を上り下りすると良い
・焼肉を食べるとお産が始まる
オロナミンCを飲むとお産が始まる
・寝ている間に始まることが多いみたい
新月か満月の日はお産が始まりやすい
・大潮の日もいいみたい

などなど・・・

焼肉やオロナミンCなどは、もはやジンクスの域だが、他のものについても、本当に科学的に証明されているかというと、不明だ。とりあえず散歩は好きだったので、一日一万歩くらい頑張ったが、結局予定日を一週間過ぎても生まれなかった。焼肉も、オロナミンCも、一応試したし、新月や満月、大潮の日にも、何も起きなかった。怪しいな、と思うようなアドバイスについても、一応は試したのだ。赤ちゃんが無事に元気に生まれてくれるなら、と思うと、科学的な根拠があろうがなかろうが、とりあえず試す気にはなった。

 結局、予定日を一週間過ぎたところで、血圧も上がったりしてしまったので、これ以上待っても仕方ないということで、促進剤を使ってお産となった。どのアドバイスも、結局わたしには効かなかったのだ。促進剤だけが、お産を助けてくれた。

 今の世の中、簡単に情報を検索できる一方で、情報の取捨選択がどんどん必要になっている。だから、情報リテラシーが必要なのは、百も承知だ。一方で、「世の中の全てのことを科学が解明しているわけではない」と思うと、少々怪しいアドバイスでも試したくなるというのが、怖いところだ。何しろ、「子どものためなら」と思ってしまう。そうすると、藁にもすがる思いで何かできることはないか、と探したくなってしまうのだ。妊娠中、そうやって情報の選択に迫られると、どこか、子どもを人質に取られたかのような気持ちにさせられた。子どもは、確かにわたしの腕の中で眠っている。でも、ネットで検索を続けるうちに、息子は、ネットの人質になってしまうから恐ろしい。犯人(情報)に惑わされずに、堂々と息子を守れるようになる日は、来るのだろうか。

(久々に書いてみたら、やたらカタい文章になってしまった…。仕事向けの文章ばかり書いていたものなあ。これはしばらくリハビリが必要になりそうだ)